『嘘を愛する女』は実話だった!? 事実は小説よりも奇なり

映画

1月20日に公開された『嘘を愛する女』
CMディレクターである中江和仁氏の長編商業映画、初監督となる作品です。
この映画は東宝配給作品なのですが、コミックや小説などの原作がある作品ではないんです。
とはいえ、この映画をもとにした小説が映画の公開に先駆けて発売されているので、それを原作と思われる方も多いかもしれません。

でも、この作品はある新聞記事にインスパイアされた中江監督が新人シナリオライターの近藤希実氏と共同で脚本を書きあげたそうです。
そういう意味では、監督自身のオリジナル脚本の作品ということがいえそうですよね。
ところで、このインスパイアした新聞記事ってどんな内容なのか気になりますよね。
そこで、映画の『嘘を愛する女』とこの新聞記事がどういう風につながっているのか、ちょっと調べてみることにしました。

 

1991年11月4日・朝日新聞掲載「夫はだれだった」

いろいろと調べていくうちに、どうやらこの記事がもとになったのではないかというものを見つけることができました。
「夫は誰だった?」という、まさに『嘘を愛する女』のキャッチコピーのようなタイトルの記事です。
引用でその記事をご紹介しますね。

五年間連れ添った夫が、五十歳で病死しました。そこで、奥さんが区役所に死亡届を出そうとしたところ、本人の戸籍がそこにはないことが分かったのです。奥さんが持っていた戸籍抄本のコピーは偽物だったのです。

実は夫が亡くなる前にも、不自然なことがありました。

病状が悪くなる一方なのに、夫は絶対に病院に行こうとはしないのです。

そこで奥さんが不審に思って、夫の勤務先である大学に問い合わせたのですが、そういう職員はいないとのことでした。

夫の身分証明書が偽物だと分かったとき、亡くなる前の夫を問いつめたことがありました。

しかし、夫は死ぬ間際に「死ぬしかなかった。本当は生きていたかったんだ」とだけ言い残して亡くなりました。

奥さんは、警察に相談したりしていろいろと調べたのですが、夫の身元について手がかりになるようなものは何もありませんでした。夫はいったいどこの誰だったのでしょうか。

夫だった男は、おそらく苦労して自分の出生の物語を創作したのでしょう。

戸籍抄本を偽造し、身分証明書を偽造し、自分の人生そのものを偽造したのです。

こうして、つじつまの合う物語を作ることで、彼は奥さんを欺いて結婚することが出来たのです。

おそらく彼には隠さなければならない過去があったのでしょう。そして、嘘の物語を作ることでしか結婚できないと思ったのでしょう。そして、実際に彼は奥さんと結婚して、五年間の幸せな人生を手にすることが出来たのです。

しかし、健康保険証を持たない彼は、病状が悪化するにもかかわらず、嘘を貫くために絶対に病院に行こうとはしなかったのです。そして、最後まで自分の正体を明かさなかったのです。

しかし彼の心には、嘘をついた罪を背負わなければならない悲しみと、出来ることなら本当の人生を生きたかったという、かなうことのなかった、はかない思いが交錯していたことでしょう。

「死ぬしかなかった。本当はもっと生きていたかったんだ」という彼の最後の言葉は、謎に満ちた彼の人生そのものではないでしょうか。

いったい本当の彼は、どこで生まれて、どのように育ってきたのでしょうか。本当の出生の物語は、いったいどんなものだったのでしょうか。

しかし、彼は真実を明かさぬまま、多くの謎を残してこの世を去っていったのです。

映画では高橋一生の役であるご主人は死なないようですが、こちらでは亡くなっています。
また、結局、身元も何もわからないままというあたりは映画とは違っているようです。
とはいえ、おおまかな雰囲気は映画によく似ていますよね。
この記事と公言されていないので、違うかもしれませんがこの記事をインスパイアしたのではないかと思ってしまいます。

 

嘘を愛する女って?

この映画では長澤まさみが演じる主人公、由加利が5年間同棲していた恋人・桔平の名前も職業も「嘘」だった。
この事実を知ったことから動き始めます。

名前も職業も嘘を教えていたということは、男にとって「都合のいい恋人」であったかもしれない主人公。
でも、逆からみるとキャリアウーマンで仕事に追われる主人公にとって、優しくしてくれるその男も「都合のいい恋人」なわけですよね。
そして、真実を求めて私立探偵と調査を続けていく中で感情に任せて探偵を振り回してしまいます。
そんな由加利は桔平の嘘の「被害者」ではなく、自分勝手で共感しづらい女として描かれています。

その彼女が桔平の本当の姿を知っていくなかで変化していく。
その経過がミステリーとラブストーリーが見事に融合した世界として描かれていきます。
小説版では映画では描き切れなかった部分の描写もあるので、両方を比べてみるというのもいいかもしれません。
今までの日本の恋愛映画とはちょっと違った部分もある。そんな『嘘を愛する女』映画館で楽しんではいかがでしょうか?

 

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

本ページはプロモーションが含まれています

TOP